はじめに
皆さん、こんにちは。 2026年4月に出前館に入社し、事業推進本部でプロダクトマネージャー(PdM)をしている金英祐(きむよんう)と申します。 普段は、出前館のあらゆるプロダクトの改善や、新しい機能の企画立案と日々向き合っています。
さて、この記事を開いてくださった皆さんの中には「テックブログ」というタイトルを見て、出前館の最新のアーキテクチャや複雑なプログラミングの話を期待された方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、今回お話するのはコードやシーケンス図の話ではありません。 コードが書かれる一歩手前で、私たちPdMや開発チームがどのようにビジネス要件とユーザー体験の狭間で泥臭く葛藤し、突破口を開いているのかという「現場のリアルなエピソードトーク」です。 綺麗なサクセスストーリーではなく、入社間もない私が直面した少し胃の痛くなるようなリアルな体験談を通じて、PdMの方はもちろん、開発の方々にも「出前館でのモノづくりって、ちょっと泥臭いけど面白そうだな」と感じていただけたら嬉しいです。
「誰かのため」だけでは案件にならない
「ユーザーが喜びそうなアイデアを思いついたぞ!」とワクワクしながら要件定義やワイヤーフレーム(WF)を書き起こしている最中、上司から「それって事業的にはどういうメリットがあるのですか?」と問われた経験はないでしょうか。 あるいは、事業課題を解決する革新的な新機能を思いついて起案してみたら、「それって誰が使うのですか?」「他のユースケースが考慮されていないのでは?」と指摘されたり……。 誰かの役に立ちたいと思って着想を得ても、事業や他の利用シーンなど多角的に検証した結果、何かが成り立たたずに案件として成立しない。そうした壁にぶつかるのは、PdMなら誰しも経験があるのではないでしょうか。 何を隠そう、私もそうした経験を何度も重ねてきた1人です。ここからは、私が出前館に入社して初めて直面した、そんな「葛藤の初案件」についてお話します。
順調に見えた初案件と、そこに潜んでいた罠
出前館の収益モデルの1つは、加盟店から売り上げの一定割合を手数料としていただくことです。そのため、加盟店の売り上げが増えることは出前館全体の事業成長に直結しており、「いかに加盟店の売り上げを伸ばすか」という視点が極めて重要になります。 裏を返せば、売り上げが最大化しきっていない注文導線や時間帯、時期、ユーザーセグメントに焦点を当てて仮説課題を立てていけば、解くべき本質的な課題が見えてきます。今回ご紹介する案件も、経営企画部門からの問題提起で本格的な検討がスタートしました。 当時、入社まもないタイミング、かつインパクトの大きい改善案件の経験がまだなかった私に、実践の場としてこの案件がアサインされました。 案件の概要は「雨の日に売り上げが低迷する事象に対し、雨の日でも影響を受けづらい特定の注文導線を活用して売り上げをカバーする」というもの。解くべき課題の背景や方向性がクリアで、ステークホルダー間の認識も揃っていたため、当初の私は「これは確実に実現できるはずだ」と少し甘く見ていました。 しかし、その安心感はすぐに吹き飛びます。「影響を受けづらい注文導線」に大きな落とし穴が存在したのです。 詳しく検証を進めると、その導線を利用した場合、ユーザーの配達待ち時間が他の導線よりも長くなってしまうことが判明しました。配達待ち時間が長くなれば注文意欲が下がるだけでなく、根本的なユーザー体験(UX)を損ねてしまうリスクがあります。「事業の売り上げは上がるかもしれないが、ユーザー体験が悪くなるのでは意味がない」——そこから、模索と議論を繰り返す泥臭い日々が始まりました。
仲間とともに手繰り寄せた、最高の着地点
「当初想定したソリューションが使えないなら、別の案はどうか」 「それではユーザー利益にはなるが、事業利益が成立しない」 「では事業利益のためにこの案では?」 「それだとユーザーにとって嬉しくない機能になってしまう」
このような議論が続き、何も決まらない日が続きました。「誰にとっても都合が良い魔法のような機能」などそう簡単には生まれないと頭では理解しつつも、精神的には苦しい時期でした。

苦肉の策として最低限形になりそうな「暫定案」を定義してみたこともあります。しかし開発チームからは、「当初の想定からかなり変わっていますが、これは本当にやるべきことなのですか?」と本質を突く質問を投げかけられ、言葉に詰まってしまうこともありました。一時はどこかで妥協し、暫定案のまま進めてしまおうかという誘惑が頭をよぎったのも事実です。
しかし、出前館のモノづくりには心強い環境がありました。PdMが1人で抱え込みがちなこうした苦悩を理解し、一緒に悩み、手助けしてくれる仲間がいたのです。
開発チームからの手厳しい意見も、すべては「本当に価値のあるプロダクトをユーザーに届けたい」という情熱があるからこそ。原案のソリューションでは実現が難しいことを全員が理解してくれた上で、目的から再定義し直す議論に皆が根気強く付き合ってくれました。
課題設定の改定とソリューションの再検討を何度も重ねた結果、最終的に完成した仕様は、当初の想定とは大きく異なるものになりました。しかしそれは、事業にとっても、ユーザーにとっても、加盟店にとっても真に価値のある、素晴らしい着地点となったのです。
ただ与えられた案件をこなすのではなく、プロジェクトに関わる全員が「本当に価値があるものを作ろう」と一致団結し、諦めずに考え抜いたからこそ到達できた成果でした。

おわりに
PdMの醍醐味は、誰よりも悩み、誰よりも考え抜き、協力してくれる仲間とともにプロジェクトをやり遂げてユーザーに価値のあるサービスを届けることにある——。この案件を通じて、私はそう強く実感しました。 もしこの記事を読んで、出前館でのモノづくりや私たちの取り組みに少しでも興味を持っていただけたなら、これ以上の喜びはありません。そして、いつか最高の仲間として一緒に働ける日が来ることを楽しみにしています!